LDV64.5

34 ブラームス_三重奏曲OP.8, 87, 101 & 114 フランスの反ドイツ派の人々は長らく、ブラームスの音楽がもつ“威圧的なまでの厳粛 さ”——とはいえ重苦しさとは無縁だ——を指摘してきた。他方、シューマン夫妻は早々に、ブ ラームスの最初のピアノ・ソナタ(op.1およびop.2)から溶岩のごとく噴出する音の激流の背 後に、この“厳粛さ”が潜んでいることを感じ取っている。なるほど、そこには厳粛さがある。 そして獰猛さもある。しかし上述の通りブラームスは、この獰猛さを、形式という枠の中で制 御してみせた。 彼の次なるステップとなった《ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op.8》(1854)は、シューマン夫 妻の気づきが正しかったことを証明している。この三重奏曲は、直前に作曲された上述の 2つのピアノ・ソナタと類似の様式で書かれており、そこでは確かに、厳粛さと獰猛さが見事 に同居している。これら3曲に更なる革新性を付与しているのは、管弦楽的に織り成された 音組織だ(シューマンはそこに“交響曲の影が見える”と評した。)私たちは、21歳のブラー ムスの円熟ぶりに言葉を失ってしまう!確かにブラームスは、後年の1889年に、機を見て op.8を改訂している(彼はまだ、幾つかの点では自分の道を模索していたわけだ。)それで もこの三重奏曲は、同時期の燃え立つような《ピアノ・ソナタ第3番》(1853)と肩を並べる作 品である。そこには早くも、スケールの大きな霊感と、彼の非凡な才能を成す全ての要素 が、はっきりと見出される。

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