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50 波にのせたメロディー 「私が思うに、音楽の至上の美徳は音そのものを超えたところにあります。楽器に固有の 音色は、音楽の一部ではあっても、音楽のもっとも重要な要素ではありません。そうである からこそ、私は音楽の本質に身をゆだねます。音楽の本質は音楽それ自体の中に存在し なければなりません……二つの音、三つの音、というふうに…… 本質は、楽器から独立して存在していなければならないのです」アルヴォ·ペルト 1977年に作曲された《フラトレス》は、エストニア出身の作曲家ペルトの最も有名な作品 の一つである。この曲には作曲家自身による複数の編曲版が存在し、本盤には弦楽四重 奏版が収められている。その時間を超越したような感覚は、サティの作品に通ずる。ペルト が自ら考案し命名した「新しい単純性」は、時を経て、音楽書法の洗練と、主題に内在する スピリチュアルな次元の発露として具現するに至った。ソビエト時代に、ペルトはソ連作曲 家同盟から糾弾され、「隔離」され、作品の演奏禁止を宣告された。彼は1980年にウィーン へ移り、その後ベルリンに定住した。ペルトにとって、この物理的な断絶は美学的な断絶を も意味する。彼は自身のルーツよりも、独自な創作の道にこだわることによって、精神の独 立をはっきりと示したのである。

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