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28 渡り鳥 ナタリーは、ここ一番の大舞台で、この上ないオーラと輝きを放った——カーネギーホール( 彼女は現地メトロポリタン歌劇場の“ディーヴァ·アッソールタ〔最高の歌姫〕”だ!)、ウィーン 国立歌劇場(彼女に“宮廷歌手”の称号を贈った劇場)、パリ·オペラ座(彼女が1992年に《ホ フマン物語》のオランピア役で伝説的な名演を披露し、大喝采を浴びた劇場)、東京オペラシ ティ(私たち二人にとって世界で最も美しいコンサートホール)での、私たちの初のデュオ·リ サイタル……終演後には何百人ものファンたちが、彼女のサインを求めて、2時間、辛抱強く 長蛇の列に並んでいた。ナタリーの研ぎ澄まされた集中力と、アーティストとしての生来の鋭 敏な感性——それは常に豊かで、霊感と威厳に満ち、幾時間にも及ぶ練習ゆえに白熱状態 にあった——は、伴奏中の私に一度ならず鳥肌を立たせ、絶えず私の演奏の糧となった。 ナタリーは、私たちの通算135回目の公演で締めくくられる2025年の“さよならツアー”のた めに、自身が知り尽くし、常に愛情を寄せてきたアメリカ音楽にオマージュを捧げることを望 んだ。ジャズに目がないナタリーは(二人で夜にニューヨークのヴィレッジ·ヴァンガードやリ ンカーン·センターへ出かけたことを思い出す)、ミュージカル(二人で一緒にブロードウェイ でベット·ミドラー演じる《メリー·ポピンズ》を観た)やスティーヴン·ソンドハイムの作品(ナタ リーは2016年にパリのシャトレ座で《パッション》に出演した)を、こよなく愛してもいる。その ようなわけで、本盤とツアーのプログラムには、ソンドハイム、アンドレ·プレヴィン、ジャン·カル ロ·メノッティ、サミュエル·バーバーの作品が含まれている。

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