47 ミシェル・ダルベルト 舞踊に仕えるヴィルトゥオジティ グノーのオペラにもとづく《「ファウスト」のワルツ - 演奏会用パラフレーズ》は、1861年の作 である。グノーは、ベッリーニと同様にリストの創作欲を刺激した。じっさいリストは、オペラ《 シバの女王》の〈シバの女王たち〉と《ロメオとジュリエット》の〈別れ、夢想〉をもとに曲を手が けてもいる。リストは、《ファウスト》の〈ワルツ〉の迫力を早くも冒頭の数小節で表現してみせ た——それは、類まれに壮大な舞台登場シーンを想像させる。大地の奥深くから生じた響き の塊から、舞踊が現れる。この響きの塊はおそらく、のちにラヴェルの《ラ・ヴァルス》にインス ピレーションを与えることになる。演奏者は、舞台装飾の多彩な輝きや、《メフィスト・ワルツ》 のトランス状態を彷彿させる活発な光景を、音に翻訳していく。ひるがえって、第2幕の愛の 二重唱のアリアは、その魅惑的な優しさによって私たちをうっとりとさせる。 ミシェル・ダルベルトいわく、「《「ノルマ」の回想》が求めるスタミナよりも、次第に加速してい く両手の動きのなかに、より鮮明にヴィルトゥオジティがみとめられます。この曲では、“加速 感”を生み出し、ふんだんな色彩を引き出す必要があります——演奏者の中には、よりいっそ う即興性を際立たせるために装飾音を加える人さえいます」
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