45 ミシェル・ダルベルト リスト、あるいは奇術師のヴィルトゥオジティ フランツ・リストの作品カタログをなす約700曲のうち、半数以上が、編曲、パラフレーズ、何 らかの主題による幻想曲、あるいは別の曲の回想である。そしてこの「回想」こそが、ベッリー ニの歌劇《ノルマ》にもとづくリストの楽曲を定義する言葉でもある。リストは、イタリアの作 曲家ベッリーニの作品のドラマティックな側面に熱を上げていた。1841年の作である《「ノ ルマ」の回想》は、リストがベッリーニのオペラをもとに手がけた最後の曲である。これに先立 ちリストは、《「清教徒」の回想》、《「清教徒」序奏とポロネーズ》、《清教徒》の〈清教徒の行進 曲〉にもとづく変奏曲《へクサメロン》、《「夢遊病の女」の動機による幻想曲》を書いていた。 7つの主題が絡み合う《「ノルマ」の回想》には、途轍もなく難易度の高いテクニックが散りば められている。とはいえミシェル・ダルベルトによれば、この曲が突きつける最大の課題はスタ ミナであるという。「この曲の半ばで展開される壮大なクレシェンドのために緊張感と十分な 体力を維持し続け、この曲を華麗に弾き終えるのは、賭けも同然のチャレンジです。両手とも、 とりわけ幅の広い和音のせいで疲れます。完全にアクロバットの世界です。私は、傑出した音 楽家だったゾルタン・コチシュのおかげで、この曲と出会いました。」
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx