41 ミシェル・ダルベルト 今回の選曲は、通常「ヴィルトゥオジック」であるとされる多くの曲をレパー トリーとするソリストにとって、たやすい作業ではなかった。それぞれの収 録曲が、テーマの要求に応えなければならなかったからである。 ミシェル・ダルベルトは、私たちに幾つかの“思考の材料”を差し出している。「偉大なヴィルト ゥオーゾであることは、必ずしも——たとえば10本の指が総動員されるラフマニノフの《ピア ノ協奏曲第3番》におけるように——大量の音を同時に弾くことを意味しません。しかも、プ ロの音楽家でさえ、これら10個の音を同時に・鮮明に聞き取ることはできないのです。“Qui peut le plus peut le moins[大事をなしうる者は小事もなしうる]”という諺は、逆も然り です! 2~3個の音が同時に・明瞭に鳴らされるモーツァルトのソナタは、聞き手に、特定の 音楽的知識をいっさい要求しません。他方、彼の緩徐楽章は、フレーズのドラマティックな緊 張感を削ぐことのないよう、極めて研ぎ澄まされた集中力と注意力が聞き手に求められます。 それは、ヴィルトゥオジティがはらむ別の表現なのではないでしょうか?」
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