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38 VIRTUS 「もともとヴィルトゥオーゾは“virtus[” 徳・美徳]を体現していた……そし てこの語の意味は徐々に変移したわけでしょう?」と、ミシェル・ダルベルト は問いかける 。 ダルベルトいわく、「フランス革命以前に、音楽は王侯貴族たち——あるいは少なくとも社会 的に教養のある人びと——の生活様式に浸透していました。そして音楽は、十分に見識のあ るアマチュアたちの好奇心を掻き立てていました。彼らにとってヴィルトゥオジティは、あくま で生来の良き趣味と洗練に奉仕するものであり、単なる技術のひけらかしは野暮な行為でし た。真のヴィルトゥオジティとは、輝かしい知性を誇示し、複雑なるもの——この語がもつあ らゆる意味において——を巧みに操ることを意味したのです」 音楽史を振り返ると、ヴィルトゥオジティは——カストラートの特異な演奏を例外とすれ ば——バロック時代の精神には属さない。じっさい、この語の『アカデミー・フランセーズ辞典』 [初版:1694年]での初出は遅く、1718年の第2版においてであった。

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