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41 トリオ・パントゥム 3つの収録曲は、3種の全く異なる芸術的アプローチを演奏者たちに要求する。トリオ·パン トゥムがラヴェルの作品において主眼としたのは、音色と透明性の探求だ。「このピアノ三 重奏曲は、人びとが必ずしも聞き慣れていない音色を3つの楽器から引き出し、管弦楽も 同然の響きを織りなすよう私たちを駆り立てます」と、岡田は語る。いっぽう、メデールの言 葉どおり、アレンスキーの作品の演奏はよりコントラストに富んだものになった。「この音楽 から聞こえてくるのは、どこまでも若々しい息吹、とりわけスケルツォ楽章で際立つ陽気な 気分、ハイドンからの影響、そしてまた、ドヴォルザークを想わせる魅惑的なエレジー〔第3 楽章〕が湛える深い抒情性です」 ソーシャル·ネットワーク(SNS)にちなんで命名されたスルンカの作品は、トリオ·パントゥム に、数々の手ごわい技術的試練を突きつけた。そこでは、ピアノの弦を弾(はじ)く·弦楽器の テールピースを弓で擦る、といった多彩な奏法が展開される。「まるで私たちの楽器から、可 能性の限界が取っ払われたかのようです」と語るパクは、そのような楽曲がもたらす喜びに ついて力説する——「私たちは、扉がきしむ音のようなノイズさえも含む、あらゆる種類の 音を楽しみ、想像を巡らせることができます。そのうえ作曲者のスルンカは、演奏にかんする 私たちの提案に、オープンな心で向き合ってくれました。たとえそれが、彼自身の認識とは相 容れない時にも……。スルンカの意図は、弾き手が非人間的になり、機械のように奏で始 める様子を示すことにあります。そのため私たちの演奏は、極めて機械的な印象を与える 必要がありました。とはいえ私たちは、そこに自分たち自身のファンタジーを介在させる自 由も手にしていました」

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