37 トリオ・パントゥム ラヴェルのピアノ三重奏曲は、2016年にトリオ·パントゥムのメンバーを引き合わせた楽曲 である。彼らは当時、まだパリ国立高等音楽院の学生だった。「初めて集まって初見で演奏 したのが、第2楽章〈パントゥム〉です。ピアノ·トリオの初心者としては、かなり大胆不敵な選 曲ですよね!」と、ユーゴー·メデール(ヴァイオリン)は振り返る。のちに彼は、多くの演奏家 たちを尻込みさせる〈パントゥム〉の猛烈なヴィルトゥオジティを意識するようになった。 「この楽章に由来するグループ名“トリオ·パントゥム”は、私たちがラヴェルの音楽はもとよ り、パントゥムそれ自体にも魅了されていることを意味しています。ボードレールやユーゴー に霊感を与えた東洋の詩形“パントゥム”の特徴は、二つの異なるアイデアを同一の詩のな かで絡み合わせ·発展させる点にあります。それは、3人の奏者が各々の個性を手放すこと なく共通のプロジェクトのために混じり合うという、私たちの“ピアノ·トリオ観”に通じていま す」と、メデールは説明する。 岡田浩二朗(ピアノ)にとって、ピアノ三重奏は弦楽四重奏と同等の献身を奏者たちに求め る編成であるという。「グループと個人の間でバランスを取らなければなりません。私たち は、ピアノ·トリオの広大なレパートリーを通して、あらゆる種類の響きのバランスを、身をも って知ることができます。たとえばラヴェルの作品では、3人の奏者の徹底した結束が求め られます。それに比べてアレンスキーの作品は、3人それぞれがソリストとして扱われている という感覚を、より強く抱かせます。そのため各楽器の音色の違いが、いっそう際立たせら れることになります」
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