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38 コン•エレガンツァ 締めくくりの《ワルツop.38》は、何をもたらすのでしょうか? 華麗さです。それは、スクリャービンが後に手がける多くの作品にみとめられる特徴です。彼 の作品カタログのなかで、《ワルツop.38》をヴィルトゥオジックで輝かしい小さな泡とみなす こともできるでしょう。しかしop.38には、二重の特性があります。このワルツの極めて魅力的 でエレガントな風采の内側では、《幻想曲op.28》で芽吹いた毒々しい要素が際立ち、ひそか に広がっているからです。《ワルツop.38》を一輪の薔薇にたとえるなら、その魅惑的な香り には毒があります。心を惑わすこの曲は、徐々に変貌し、過剰で狂おしいオクターヴの氾濫 へと向かっていきますが、それを冒頭ですぐに明かすことはしません。この夢と幻想のワルツ は、ラヴェルがより大規模に構想したワルツ〔《ラ・ヴァルス》〕にやや似ています。

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