36 コン•エレガンツァ 《幻想曲op.28》は、本盤のプログラムでどのような位置付けにありますか? この曲の 特徴についてもお話しください。 即興曲の次に配した《幻想曲op.28》は、《ソナタ第3番》をかなり強く想起させます。スクリ ャービンの最後のロマン主義的な息吹を聞かせるop.28は、《ソナタ第3番》と、彼の第2の 創作期の到来を告げる《ソナタ第4番》のあいだに完成した作品です。緻密に構築された単 一楽章のop.28は、まるでソナタを成す大規模な楽章のようであり、その力強さの大部分 は、堅固な構造から引き出されています。演劇的で、ことさらに悲劇的で抒情的なこの幻想 曲は、作曲者スクリャービンの極端なるものへの嗜好を物語っていますし、危険でありなが ら恐ろしく魅力的な何かを放つ音楽でもあります。この曲を弾いていると、その危険に近づ いて捕らえられてしまうことへの抗しがたい欲求にかられます。人を破滅へといざなう性質 を秘めた曲なのです。それこそが、形式的構造を超えたところで、息を呑むような効果を生ん でいます。 スクリャービンは《幻想曲op.28》とともに、ありとあらゆる限界を押し広げました。大変な 難曲としてピアニストの限界を押し広げたことはもちろんですが、ピアノの音色やピアノ書法 の限界も押し広げ、その可能性を超越しています。さらに、響きの陶酔が極みへと達すると き、曲の圧倒的な迫力が聞き手の限界をも押し広げます。
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