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35 クレマン・ルフェーヴル あなた自身の心理状態について、お聞かせください。 いつも《ソナタ第3番》を弾くときには、自分自身のほぼ全てを曲に投入します。精神的に非 常に過酷な曲なので、“無傷”で弾き終わることは決してありません。どれほど自分自身に「ず っと冷静でいろ」と言い聞かせても、毎回、自分の人生がかかっているかのように演奏してし まうのです。このソナタは、私の個人的な物語と結びつき、私の心の奥底にある感情を呼び 起こします。この曲を練習し始めたとき、ちょうど私は娘の誕生を待っているところでした。今 日、あの時期のことを思い出さずに第3楽章を弾くことはできません。自分という存在を一変 させることになる特別な出来事を待つ喜びが、いつも蘇ってしまうのです。その感情に圧倒 されないよう、コンサート中に自制することもあります。しかも、終楽章の目もくらむような旋 風のなかでは、絶えず窮地に立って危機感を抱いているような気分になります。

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