33 クレマン・ルフェーヴル これら一連の即興曲は、ショパンの即興曲と同じように、ピアノならではの美しい音を聞か せます。ひるがえって、《ソナタ第3番》には管弦楽的な側面があるように思えます。 《ソナタ第3番》の書法には、全くピアニスティックではない箇所が散見されます。スクリャ ービンは、ピアノどころか、管弦楽さえも超越しています。このソナタのサウンドや、極めて内 向的な雰囲気は、物質性から脱しているのです。触知できない詩情が、可塑的な音素材から 生じています。それは、スクリャービンがノートに書き留めた言葉——「詩的であればあるほ ど、より現実に近づく」——とは矛盾しているように思えます。しかしながら、彼の現実の概 念は、私たちのそれとは異なり、具象的なものを拠り所としていません! なおもショパンの 足跡を残す《ソナタ第3番》には、別の作曲家の影響も新たに見出されます。というのもスク リャービンは、このソナタにおいて、可能性の枠をより大きく広げているのです。彼は、音響 空間と和声的処理を拡大し、冒頭の主題を第3・4楽章で回帰させることによってライト・モ チーフ(示導動機)を導入し、第4楽章で急進的な半音階的手法を用いています。さらに、こ の終楽章で再び現れる第3楽章〈アンダンテ〉の主題の旋律は、無限旋律のように延々と続 きます。これらの多くのワーグナー的要素こそが、このソナタの最も顕著な指標であると私 は考えています。
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