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30 コン•エレガンツァ 若きスクリャービンが手がけた即興曲は、どのような“ステップ”を体現しているのでし ょう? 私は、スクリャービンの一連の即興曲を、一枚の巨大な写真——彼の全作品群——を構成 する一つのディティール(細部)として捉えたいと考えています。やや目立たぬ存在でも、重要 な事実を内包しうるディティールとして…。彼の即興曲は、全曲合わせて僅か30分ほどの音 楽ですが、彼が敬愛するショパンの影響はもとより、彼の小規模な形式への偏愛や、洗練に 対する嗜好、彼の音楽に特有のエレガンスをはっきりと示してもいます。その後もスクリャー ビンは、最も暗く幻惑的な作品においてさえ、この洗練を保ち続けることになります。彼の即 興曲は、どれも素描や詩的なスナップ写真のようであり、その自発性や瑞々しさの源泉は、彼 の湧き出でるインスピレーションです。即興曲の軽やかさや親密さは、《ソナタ第3番》と《幻 想曲》の濃密さやナラティヴな力強さとは対照的です。彼の即興曲が、今日あまり演奏され ておらず、滅多に録音されていないことが、信じられません。スクリャービンの音楽がもつ特 性の一つに重要な光を当てる名曲ばかりなのに…。即興曲を本盤の中心に据えたのは、こ れらの曲の真価を私なりに認めたいという思いからです。

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