44 ジャズ・エイジの物語 いやはや! だがこの言葉は、20世紀音楽の本質をも見事に言い表して いるのではあるまいか? 20世紀音楽は、戦争とお祭り騒ぎから生まれ たのではあるまいか? いずれにせよ狂騒の20年代は、既成概念から飛 び出そうとした時代であったように思える。人びとは「ダダ」と声高に叫ん だ。言葉は解放された時に美しくなるという理由で——ならば言葉同士 の結びつきを無くしてしまえばいい! 詩情は、どこか別の場所にある。 先の〔第一次世界〕大戦の終わりには、カジミール・マレーヴィチが、真っ 白なカンバスの上に白い正方形を描いてみせた。君たちの客観的なリアリ ティで俺たちを悩ますのは、もうよしてくれ。俺たちは、パリの雨の匂いが 混ざったアブサンで酩酊しながら、そのリアリティとやらをひっくり返して やろう。このパリの雨は、おそらく俺たちを次の大戦へと連れていく。だが それまでは、生を謳歌し、感じ、感動し、冒険し、宴と熱狂を賛美しよう。た とえ、紙飛行機のように空中で回転し、何度も目眩(めまい)を起こし、酩 酊から人間の魂と笑いの灯火を引き出そうと試みることになっても。たと え、紙飛行機を自らすすんで墜落させることになっても——その惨事の灰 の上で、いつの日か音楽は再建されるのだから。
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