LDV137

41 フロリアン・ノアック パリでは、バナナを腰からぶら下げて、あるいは恥じらいもなく腰をくねらせて、体を揺する ことができた。踊る女たちは、声が枯れるほど歌い、機械化のおかげで手にしたエネルギー を発散させた——主婦たちは勝利の歓声をあげた:トースターが台所に置かれ、初期の洗 濯機が全速力で回っている。エリートとは縁遠い人びとが、各地の飲み屋で“受信機”を取り 囲み、エッフェル塔ラジオやラディオラの番組を流す装置にじっと目を据えていた。そして万 人に歌いかける声が生まれた——ミスタンゲット、モーリス・シュヴァリエらが、世界に向け てパリの肖像を描いた。“みんなのための声”が、レコードのノイズとともにパリを歌い上げる。 〔シュヴァリエの〕《Dans la vie, faut pas s’en faire〔人生、心配しちゃだめだ〕》、《Paris sera toujours Paris〔いつだってパリはパリ〕》……。レコードが敏速に回転する。毎分78 回転。片面に一曲ずつ。セラック盤を裏返すまでに、ちょうど酒を一杯、手に入れられる。パリ はどこもお祭り騒ぎで、そこかしこで踊ることができた。そこかしこで酒を飲み、世界を新しく 作り変え、種々のジャンルを混ぜ合わせ、知り合いを作ることができた。芸術家たちは、ラ・ク ーポール、ラ・ロトンド、クロズリー・デ・リラといったカフェに足繁く通った。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx