LDV132-3

73 トリオ·ソーラ その喜びは、続く第3楽章〈アダージョ・メスト〉では影を潜めます…… ポリーヌ:〈アダージョ〉は大いなる深みを湛えています。情熱や盛んな血気は、もはや過去 のものです。後戻りはありません。そこにあるのは、取り返し不可能な喪失です。しかし曲調 は、悲哀を感じさせることなく、運命を甘受した心を体現しています。 ファニー:あらゆる緊張感が消失し、限りない悲しみだけがそこに残ります。そしてブラーム スは、この悲しみに身をゆだねます。もはや彼は、悲しみと闘いません。諦め、すべてを受け 入れるのです。 アンジェル:本盤に収めた四つのトリオは、いずれも、ヨハネス・ブラームスが歩んだ長い人 生の道しるべのような存在です。4曲は、そのときどきに彼が心の内で経験したものものを 映し出しています:若き日の盛んな血気、ほとばしる愛情、そして試練、達観、諦念、ノスタル ジー……。だからこそ私たちは全曲録音にこだわり、ブラームスが歩んだ道を彼の音楽と 共に漏れなくたどることを強く望んだのです。

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