69 トリオ·ソーラ 1886年、晩年に差しかかったブラームスは自身最後のピアノ・トリオを作曲しました。こ のときすでに、四つの交響曲、二つのピアノ協奏曲、そしてヴァイオリン協奏曲が完成して いました。第3番(作品101)は、第2番(作品87)よりもさらに小ぶりです…… アンジェル:一連の記念碑的な大曲のあとに、第3番が生まれました。第3番は確かに小ぶ りですが、種々の感情が凝縮されているため、巨大な印象を与えます。その引き締まった書 法においては、全ての要素が途轍もなく強烈です。各主題を結ぶ経過部も、よりいっそう簡 潔で、全体の流れに“回り道”がありません。いわば核心をつく音楽です。 ポリーヌ:壮大で雄弁な第3番において、私たちはブラームスらしい血気に再び触れること になります。ハ短調という暗い調性の内奥には、熱情が潜んでいます。第1楽章では、そのあ まりに高い緊張感ゆえに、奏者の間に無呼吸状態にも似た張り詰めた空気が流れます。 ファニー:第3番では、考え抜かれた簡潔な書法と、民謡風の楽想が、見事に調和していま す。この曲においてブラームスは、ウィンナー・ワルツ、チャールダーシュの魅惑的なリズム、「 ハンガリー風」の哀愁漂う旋律、そして民謡の素朴さにオマージュを捧げているように感じ られます。第2楽章〈プレスト・ノン・アッサイ〉の中間部には、以前のスケルツォに特有の、主 部と対照を成す抒情的なエピソードはありません。そこには、一呼吸を置くひとときや夢想 的な旋律はないのです。この楽章は、幽霊たちのダンスを私に想起させます。
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