LDV132-3

67 トリオ·ソーラ この曲は何を表現していると思われますか? ポリーヌ:北ドイツの靄(もや)でしょうか。ピアノのための《四つのバラード》でも感じ取るこ とができる靄……。第2楽章〈アンダンテ〉には、ある種の重力があります。それゆえにベート ーヴェンのトリオ《大公》の緩徐楽章[第3楽章〈アンダンテ・カンタービレ〉]を私に想起させ ますが、ブラームスの〈アンダンテ〉は光を欠いています。そこでは《大公》の緩徐楽章と同じ ように、一連の変奏曲が、有機的に、休みなく、同質的な雰囲気の中で繋がっています。短調 の調性が、この楽章を痛ましく重々しいものにしています。まるで鉛のように重く、あらゆる喜 びの感情が排除されています。この楽章がはらむドラマは、人目に立つことを拒んでいます。 続く第3楽章〈スケルツォ〉の性格と書法は、メンデルスゾーンの音世界を彷彿させます。 ポリーヌ:確かに、その夢幻的な性格はメンデルスゾーンを想起させるかもしれません。ただ し音楽自体は、徹頭徹尾ブラームスのそれです! ちなみに第1番の〈スケルツォ〉は、ベー トーヴェンのスケルツォの精神により近いように思います。私が最も驚かされるのは、第3番 (作品101)でスケルツォの代わりを担う第2楽章〈プレスト・ノン・アッサイ〉です——最も 幻想的で、最も捉えどころがないスケルツォであることは確かです。わずか3分弱で、幻のよう に消えてしまいます!

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