LDV132-3

65 トリオ·ソーラ 第1番の特徴は何でしょうか? それはどのような光景や感情を彷彿させますか? ポリーヌ:第1番は冒頭からすぐさま、ほとばしる感情の中へ私たちを引き込みます。出だし のゆったりとした旋律は、まるで堂々たる愛の告白のようです。 アンジェル:ブラームスが出会ったばかりのクララに抱いた恋情を無視することはできませ ん。それは、この曲の至るところで表現されています。今しがたポリーヌが言及した旋律もそ うですし、終楽章で回帰する〈スケルツォ〉の中間主題もそうです。第1番を弾いていると、ブ ラームスの恋情だけでなく、彼のシューマン夫妻に対する感謝や友情の念もひしひしと感じ ます。これらの感情が巻き起こす“旋風”を、ブラームス自身も、シューマン夫妻の家で経験し たに違いありません。第1〜3楽章とは打って変わって、短調の終楽章を駆け巡るのは種々 の痛ましい感情です。私たちは、そこから絶望を聞き取ります。 〈スケルツォ〉に続く第3楽章〈アダージョ〉は、実に神秘的です…… アンジェル:エバーハルト・フェルツ先生から3週間ご指導いただいた機会は、私たちの演 奏にとりわけ深い影響をおよぼしました。3人で〈アダージョ〉を弾き始めたとき、先生は演奏 を止め、この楽章の冒頭で響く5度音程が内包する——先生いわく——天上的な次元につ いて語ってくださいました。先生は天を一瞥するかのように、こう説明しました:「この5度は、 神様なんだ!」と。そして私たちは、先生の前で〈アダージョ〉の出だしを何十回も弾き直した 末に、天上に至れたような感覚をおぼえました。私たちの〈アダージョ〉の演奏は、当初の想 像を超える域へと引き上げられたのです。

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