63 トリオ·ソーラ デビュー・アルバムでは、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の全曲録音に取り組まれまし たね。本盤のためにブラームスのピアノ三重奏曲全曲を選んだ理由をお聞かせください。 ポリーヌ:ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の全曲録音には恐る恐る挑みました。ピアノ三 重奏団にとってエベレストのようなレパートリーですから、デビュー盤で取り上げるのは大 胆な賭けでした。偶然にも、私たち3人が、おのおの人生で初めて弾いた室内楽曲がブラー ムスのピアノ三重奏曲でした。2022年に私とアンジェルが[その後に新加入した]ファニー と初めて3人で演奏したときにも、ブラームスの第1番の譜を開きました。ブラームスは、3人 にとってごく身近な作曲家でした。もともと私たちは中途半端なことは避ける傾向にあり、全 曲録音することで意見が一致しました。こうして二つ目のエベレストが私たちの目の前にそ びえたのです! 古典派のベートーヴェンとロマン派のブラームスの音楽は、別世界のものであるとお考え ですか? アンジェル:これはベートーヴェンにも言えることですが、ブラームスの最初期の作品には、 すでに“ブラームスらしさ”がみとめられます。彼の音楽は、多くの面で古典派の遺産を継承 しており、ロマン派に属していながらも、楽曲構造、とりわけ形式に依拠しています。私たちの 演奏解釈では、ベートーヴェンはピアノ・トリオにおいて未来を見つめています。一方、ロマン 主義者ブラームスは、その眼差しを過去へ向け、過去にならい、過去に深く根ざしています。 この視点こそ、私たちのブラームスのピアノ・トリオの演奏を方向づけるものです。
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