55 フランス組曲の全6曲をコンサートで演奏するときには、どのようなことを感じています か? 作曲者バッハが音楽を通して表現することができた、あらゆる種類の感情……底抜けに楽 しい感情から、この上なく痛ましい感情まで……その全てを体験しているような気分になり ます。そこでは、悲しみ、憂愁、郷愁が、様々なかたちで表現されています。幾つかの舞曲が、 バッハの音楽には珍しいユーモアを感じさせることも忘れてはなりません。私が唯一、フラン ス組曲の演奏中に微塵も感じたことがないのは“暴力性”です。ちなみに、とりわけ彼の受難 曲では、暴力性が垣間見えることがあります。 フランス組曲全曲をチクルスとして演奏するのは、真に意義のあることだ と思います。コンサートでは、途中で一度休憩を挟むとはいえ、拍手を控 えていただき次々に組曲を弾いていくのが好きです——それはまるで、一 連(ひとつら)の内なる壮大な旅のように思えます。 セドリック・ペシャ
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