LDV130-1

54 ピアノを介して、どのような音色や響きを再現ないし模倣しようとしたのですか? 私は、かつて自宅で、しきりにフランス組曲をクラヴィコードで弾いていました。バッハは、こ の楽器をこよなく愛していたそうです。クラヴィコードは、〔打鍵後に〕鍵への圧力をわずかに 増減させてビブラートをかける〔ベーブング〕ことができる唯一の鍵盤楽器です。私は、この 楽器のおかげで、歌唱に近い演奏スタイルを身につけることができました。 私にとって、音色について熟考する上で重要な第二の要素は、ある音域から別の音域への 移行です。そのため私は、古い鍵盤楽器を貫く美意識を参考にしました。なぜなら、全音域 にわたって均質な音色や響きが並ぶ今日の楽器の鍵盤とは異なり、昔の楽器の鍵盤は、三 つまたは四つのゾーンに明確に区分されており、おのおのが異なる音色や響きを生み出すか らです。それによって、サウンドの種々の距離感を細やかに弾き分け、空間化の効果を生み出 すことができます。 バッハ | フランス組曲全集(BWV812-817)

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