48 バッハ | フランス組曲全集(BWV812-817) バッハが弟子たちや息子たちのために——しかも私的な使用のために——作曲したフラ ンス組曲を演奏していると、バッハの家庭の中にいるような感覚を抱くものでしょうか? まさにそうです。特にフランス組曲は、チェンバロかクラヴィコードでの演奏、つまり比較的に 狭い空間での演奏を想定して書かれていますからね。フーガの技法のような、より抽象的で 難解な作品とは対照的に、フランス組曲は、そのときどきの表情をダイレクトに伝えますし、 曲によっては、ごく限られた音素材に基づいています。たとえばロ短調の組曲第3番のアルマ ンドは、4音からなる単一のモチーフに基づいています。まるでバッハは、巧妙な技法は無し に、本質へと、そして心へと、一直線に向かおうとしているかのようです。じっさい、この曲か らは、傑出した対位法の技能の誇示を控え、近しい人たちの心の琴線に触れようとする謙 虚な作曲者の姿が浮かび上がってきます。 私は今回フランス組曲を、自分の楽器(1901年製のスタインウェイ·コンサート·グランド·ピ アノ)を用いて、自分の練習スタジオで録音することにしました。この音楽の家庭的な性格を 感じることができる私的な空間が必要だったのです。
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