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32 夜想曲 2つの子守歌、《夜想曲とタランテラ》、《夢のあとに》と夜の関係は火を見るよりも明らか です。ヴァイオリン·ソナタと夜は、どのように結びついているのでしょうか? エヴァ·ザヴァロ:あくまで個人的な解釈ですが、2つのソナタは、さまざまな夜のイメージを 喚起しています——叙事詩や舞曲を彷彿させる、神秘的で、内省的で、哲学的とすら言える ような夜のイメージを……。シマノフスキは20歳のときに《ヴァイオリン·ソナタ ニ短調》を 作曲しました。そこでは、神秘主義的な詩——とりわけタデウシュ·ミチンスキ(1873-1918 )の詩——の世界にどっぷりと浸かった若き作曲家の情熱が渦巻いています。なおも極めて ロマン主義的なこのソナタにおいて、シマノフスキの超越性の探求が手に取るように分かり ます。私が第1楽章で思い浮かべるのは、熱っぽい苦悩に満ちた“眠れぬ夜”です。第2楽章で は、まず穏やかな星月夜が背景に広がります。愛の夜にふさわしい抒情的で高揚感に満ち たクライマックスを経て、再び星月夜がおとずれます。第3楽章の狂おしいギャロップ(駆歩) を支えるタランテラのリズムは、《夜想曲とタランテラ》を予示しています。これとは対照的 に、フォーレの音楽が表現する夜は、内なる世界に属す、より親密な夜です。《ヴァイオリン· ソナタ第2番》を作曲中(1916年)の彼を苦しめていた難聴は、不透明な響き、言うなれば“ 聴覚的な夜”へ通じているように思えます。一度聴取(·演奏)しただけでは全てを把握しき れず、闇の中を手探りで進んでいるような第一印象を与えます。繰り返し聞き、慣れていく必 要のある音楽であり、そうして初めて奇跡が起こります。はじめに当惑を引き起こしたものも のを、自然に受けとめられるようになるのです。私たちは、闇の後に光がおとずれるのを見届 け、ついにはフォーレ特有の音のさすらいを、宝物のように切望するようになります。

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