67 テオ・フシュヌレ 翌年、仏“ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク・クラシック”の新人賞(器楽奏者部門)にノミネ ートされたテオは、リサイタルを重ね、一つのプロジェクトを実現させた。ラ・ドルチェ・ヴォル タ・レーベルからリリースした、ベートーヴェン作品を収めたデビュー盤だ。彼は、《ワルトシ ュタイン》と《ハンマークラヴィーア》を長い歳月を待たずして録音し世に出したが、音楽とい うものは、時として時間を必要とする。彼のレパートリーへの渇望は、彼の要求の高さ—— 絶えざる完璧主義——と折り合いをつけなければならない。そして今度はフォーレの夜想 曲集が、長い抱卵を経て孵化し、ディスクに収められることになった。テオはすでに未来を見 つめている——メンデルスゾーン、やがてはシューベルトも録音したい……。いつの日か、バ ッハを——テオはバッハのオルガン作品を敬愛している——録音することになるかもしれな い。時の流れを遡(さかのぼ)り、自分が今日しばしば接している音楽の源泉へと至るのだ。 マレイ・ペライアやアンドラーシュ・シフに倣(なら)い、対位法の平静な表現世界の中で、明 晰な展開とサウンド、純粋な感情を見出すために……。 室内楽——豊かな出会いと多様なプロジェクトを約束してくれるジャンル——は、初めて経 験して以来ずっと、テオの演奏人生の中で揺るぎない位置を占めてきた。ベートーヴェンか らストラヴィンスキーまで、二重奏から五重奏まで、彼のレパートリーは実に幅広い! テオ は、兄と組んで挑んだ初の全曲演奏プロジェクトでは、ロベルト・シューマンのヴァイオリン とピアノのための作品を取り上げた。ベーラ・バルトークも、テオが崇拝する作曲家の一人 だ。彼にバルトークへの愛を植え付け、バルトークの音楽の多彩な感情と力強い構成につ いて教えたのは、師のオルテンス・カルティエ=ブレッソンだ。テオにとって、コンサートでの バルトークの《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》の演奏は、つねに胸躍る冒険である。こ の曲を録音する予定はあるのだろうか? 「夢の一つです! でも辛抱強く熟させなくて は……。」それはテオにとって、熟成後に真価を発揮する年代物のワインのような作品な のだ。
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