61 テオ・フシュヌレ 第6番は、どの点において“独創的”なのですか? 演奏の際、その独創性にどのようにア プローチしているのでしょうか? 第6番は“だまし絵”のような音楽ですし、重力とは無縁の音楽で、無重力状態を錯覚させま す。複数の響きの層が魔法のように連関し、分かちがたく混ざり合っています。3拍子のパッ セージは2拍子のように聞こえます。リズム的・和声的な指標は乱され、ぼかされています。 各小節の第1拍目はあやふやで、強拍と弱拍の概念は消え去り、焦点はぼやけ、ジャンケレヴ ィッチが的確に言い表したように「曖昧さが明瞭さの上に擦筆を走らせる」のです! 弱拍 で始まる冒頭の旋律は、吊るされた長い糸のようです。私は、この音楽を引き立たせ、多様な シークエンスを一体化させるために、フォーレによるテンポ表記にできるだけ厳密に従うこ とにしました。さらに先では、高音域で展開される16分音符の夢幻的なパッセージが速い テンポを求めており、最上声で“空中浮揚”する旋律線がハーフペダルに支えられています。 コーダで冒頭の主題が回帰すると、私たちは再び、あの吊るされているような感覚を抱きま す。第6番は傑作であり、この曲にまつわる逸話について語らずにはいられません。ある婦人 から、どのような絶景を前にして曲のインスピレーションを得たのかと聞かれたフォーレは、 こう答えたそうです!——「シンプロン・トンネルの中ですよ」
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