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56 ガブリエル・フォーレ | 夜想曲全集 フォーレの夜想曲の大半は19世紀末に作曲されました。それらは、ロマン主義からどのよ うな影響を受けていますか? フォーレの夜想曲の幾つかは、ショパンの卓抜なピアノ書法を彷彿させます。これに当ては まるのは、最初期の全ての夜想曲、さらに第5番の中間部で現れるロマン主義の追憶や、第 9番のアレグロのパッセージが聞かせる叙情的な息吹です。しかしながら、より鮮明に感じら れるのは、ドイツ音楽、なかでもシューマンからの影響です。第6番の冒頭では、2拍子と3拍 子の両義性が、シューマンの書法を想起させるでしょう? シンコペーションの多用も! 私にとって、フォーレとシューマンは過ぎゆく時を忘れさせる作曲家です。2人とも似通った 手法で、しばし時を中断させます。 全夜想曲の作曲は、およそ半世紀にわたって進められました。それらは、長命であったフォ ーレの若かりし時代・円熟期・最晩年にまたがっています。第1番は1875年の作で、彼の 最後のピアノ曲である第13番は1921年の作です。これらの夜想曲と並行して書かれた 13曲の舟歌に、夜想曲との共通点や繋がりはみとめられますか? フォーレの夜想曲と舟歌は、まるで“分身”のようです。しばしば彼は、舟歌を1曲書き終えた 直後に夜想曲を書いたり、その逆を行ったりしていました。しかしそもそも、これらの作品の あいだに、ジャンル的な相違はほとんどありません。《舟歌第1番》は夜想曲と題されても何 ら不自然ではないですし、《夜想曲第12番》や《夜想曲第4番》は、3拍子で揺れるリズムゆ えに、舟歌と題されうる作品です。

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