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50 ショーソン / ラヴェル | ピアノ三重奏曲 第1楽章〈中庸なテンポで〉について伺います。この楽章を貫く神秘的なうねりと、見せか けの天真爛漫さは、どのように再現されるべきでしょうか? ナタン·ミエルドル: 確かに理想的には、天真爛漫に聞こえなければなりません…。この上な く謙虚な姿勢で演奏を準備する必要もあります。 ロール=エレーヌ·ミシェル: どうしても作曲時期を意識してしまいます。曲が書かれたのは 第一次世界大戦の勃発直後で、ラヴェルは幾度か従軍を志願していたからです。彼は、これ が自分の白鳥の歌になるかもしれないと覚悟し、戦闘に先立つささやかな休息として、筆を 進めたのではないでしょうか? ヴィクトル·メトラル: この作品について学び·演奏すればするほど、その密度の濃さをいっそ う実感します。この曲の難しさは、簡明さと舞曲に酷似した曲調を維持しなければならない 点にあります。優先順位の高い声部や、次々に楽器を変えながら聞き手に気づかれずに変 容していく主要主題を、明らかにする必要もあります。それは巧みに隠されているため、ラヴ ェルが仕掛けた巧妙な“罠”から私たちを救ってくれるのは徹底した分析だけです。この曲の ピアノ書法について言えば、幾つかの——とりわけ〈パントゥム〉や〈終曲〉の——パッセージ は、《夜のガスパール》の〈スカルボ〉に比肩します! ロール=エレーヌ·ミシェル: あらゆる室内楽作品の中でも、群を抜いて管弦楽的な三重奏 曲であると思います。舞台で弾いているのは3人だけであるにもかかわらず、オーケストラの 分厚い響きを聞いているような印象を与えるパッセージもあります。
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