LDV115-6
48 バッハ | 無伴奏チェロ組曲(全曲) 第3番を照らすのは、輝かしいハ長調の響きである。この組曲を、脳内でオルガン音楽に移 し替えてみてはどうだろう? じっさい、その壮麗で美しい旋律は、架空の教会のステンド グラスに明るい光を注いでいるかのようだ。〈前奏曲〉の後、〈アルマンド〉が気ままに、陽気 に歌う。続く〈クーラント〉は、非の打ちどころのない曲線模様の布地をひたすらに織り上 げながら、まっしぐらに駆けていく。この曲集の中でもっとも強烈な印象を与える〈サラバン ド〉は、弓全体を駆使しながら、濃密なポリフォニーを展開していく――それゆえに私たち は、この楽章が単に二つの楽器のために書かれたのではないかと時に疑うことになる。緊 張感に満ちた〈サラバンド〉の後、二つの〈ブーレ〉の大衆的で民俗音楽的とさえ言える曲 調が、弛緩をもたらす。終曲の〈ジーグ〉も同種の曲調を帯びているものの、その響きの陶酔 がヴィルトゥオジティを著しく強める。 第4番変ホ長調の〈前奏曲〉は、リュートの音色と当時のフランス式パイプ・オルガンの響 きを彷彿させる。オスティナートの動機は、まるで中断を禁じられているかのように、絶え ず最低音域へと下降していく。この重厚な〈前奏曲〉の後、〈アルマンド〉が抒情的かつ即興 的な声で歌を紡ぐ。陽気に跳ねる〈クーラント〉は、繊細さとユーモアを兼ねそなえている。 それは、意中を明かし合い、どっと笑い、尋ね合う二人の人物の対話を模しているのだろう か? 親密な空気をまとった〈サラバンド〉は、よりいっそう高雅である。この〈サラバンド〉 が、田舎風の〈ブーレⅠ&Ⅱ〉と屈託のない〈ジーグ〉との間に生むコントラストは、実に鮮烈 だ!
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