LDV115-6
42 バッハ | 無伴奏チェロ組曲(全曲) この音楽がはらむ“無限性”の概念は、バッハ作品に特有のものだと思われますか? 私は、バッハの音楽と現代音楽へのアプローチを区別するつもりはありません。ある曲に 初めて接して学んでいく作業は、時代や作曲者を問わず同じです。つまり私は、どんな曲で あっても、作曲者および作品の様式と文化的・歴史的背景を知ろうと努めます。唯一の違 いは、バッハ作品の場合、当時の録音資料がいっさい手元にないという点です。私たち自身 で作品の演奏方法を想像するほかなく、全てが推測の域を出ません。 しばしば《無伴奏チェロ組曲》では、多種多様な旋律とリズムが、ごく複雑な書法と組み 合わされています。じっさいの演奏では、これらの要素をどのように統合していくのでしょ うか? この曲集は、自筆譜がなく情報が少ないにもかかわらず、あまりに豊富な内容が詰まって いるがゆえに、まるでパズルのような印象を与えます――私自身は、この印象を《無伴奏ヴ ァイオリンのためのソナタとパルティータ》よりもいっそう強く抱きます。このパズルは、あ またの問題を提起し、音楽学者と演奏家たちの間に無数の論争を巻き起こしています。逆 説的ですが――私にとって、それは常に信じがたいことなのですが――、《無伴奏チェロ組 曲》は、耳には全く明快に聞こえます。つまり、この曲集はできるだけシンプルに、できるだけ 自然に演奏されるべきなのです。これまで私は《無伴奏チェロ組曲》をあまりに頻繁に練習 してきたため、この曲集を弾くさいには、自分の直感だけに導かれています!
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