LDV111-2

1801年、ベートーヴェンは《魔笛》から二つ目の主題を借用した。こうして生まれたのが、《 「恋を知る殿方には」の主題による七つの変奏曲 WoO.46 変ホ長調》である。「モーツァ ルトの死から10年が経っていた当時、彼の最後の歌劇《魔笛》は、まだドイツの聴衆たちの 心の中に鮮やかに刻まれていました。ベートーヴェンがチェロ変奏曲のために選んだ二つ の主題のうち、WoO.46の主題は、よりシリアスです」とセリグは説明する。じっさい、パミ ーナとパパゲーノの二重唱に由来する主題は、私生活で幾度か婚約破棄を経験したベー トーヴェンに、恋の情熱と(それと同じだけの)落胆を表現する機会を与えた。モーツァル トのドイツ語の歌劇にオマージュを捧げるWoO.46では、密な書法による主題提示(アン ダンティーノ)の時点で、すでに二人の奏者が対等な関係を結んでいる。 いっぽう、ヘンデルのオラトリオ《マカベウスのユダ》にもとづく《「見よ、勇者は帰る」の 主題による12の変奏曲 ト長調 WoO.45》は、より軽く喜ばしい内容をあつかってい る。1796年にベルリンで作曲されたこの変奏曲では、二つの楽器が華麗な超絶技巧を聞 かせる。“ギャラント(優美)様式”による変化に富んだ書法は、この作品の献呈者であるクリ スティーネ·フォン·リヒノフスキー侯爵夫人(ベートーヴェンの庇護者の妻)を喜ばせたこ とだろう。

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