LDV111-2

変奏は歌う… 「ベートーヴェンは、最晩年に手がけた傑作群に至るまで、生涯にわたり変奏技法を駆 使しました。その最たる例が、《ディアベッリ変奏曲》と交響曲第9番でしょう。即興の天 才であった彼にとって、先例のない表現の数々を追求することができる変奏曲は、理想 的な形式だったのです。そしてチェロ奏者たちは、この分野において特大の幸運を手にし ています! ベルリンの宮廷で出会った名手ジャン=ルイ·デュポール(1749-1819) が、楽聖のチェロ作品に殊のほか大きな影響を与えたことは確かです」と、ダヴィッド·セ リグは語る。 セリグによれば、「《モーツァルトの「魔笛」から「娘っ子でも女房でも」の主題による12の 変奏曲 作品66 ヘ長調》の何よりの特徴は、管弦楽的な響き」である。セリグいわく、この 曲において「ベートーヴェンは、主題を自身の表現手段として消化し、確固たる音楽言語 を展開」している。1796年に書かれた作品66は、鳥刺しのパパゲーノが“伴侶が欲しい” と憧れる場面を振り返る。変奏曲の主題はアレグレットで提示され、ピアノが鍵盤の高音 域でグロッケンシュピールの響きを真似る。ベートーヴェンは、《魔笛》の他の場面からも 音楽的な要素を借用することによって自身のインスピレーションを膨らませており、たとえ ば、行進曲の遍在やオーケストラの多彩な音色を強調している。当時の聴衆たちは、耳慣 れた有名な主題にベートーヴェンが授けた複雑な書法——特に大胆な和声——に困惑 した。

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