LDV111-2
58 ベートーヴェン | チェロとピアノのためのソナタ&変奏曲全集 最後に、レコーディング・セッションについてお聞かせください。 ゲイリー・ホフマン : 録音マイクの存在は、私たちがコンサートとはやや異なる配置で演奏 しなければならないことを意味します。とはいえそれは、もっぱらテクニカルで細かな事柄で す。演奏それ自体にかんして言えば、私たちは互いが個性を保つことを殊に重視しています。 私たちが演奏しているのは室内楽ですから、“対話”をしているわけですが、だからと言ってそ れは、必ずしもサウンドの均質性を強いる対話ではないのです。 今日、個性の概念が失われつつあることを残念に思います。演奏の醍醐味 は、楽譜に現れるさまざまな“キャラクター”を明らかにすることにあります。 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲においてさえ、響きの“合一”の中から、複数 の声が現れ出てきます。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx