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57 ゲイリー・ホフマン | ダヴィッド・セリグ 最後のソナタ第5番は、第4番の延長線上にあるのでしょうか? あるいは2曲のあいだに は、様式面での断絶が存在するのでしょうか? ゲイリー・ホフマン : 2曲のあいだには、継続も断絶も存在します! 第5番は、全5曲の中 で唯一、緩徐楽章を有しています。第1楽章は、第4番の冒頭楽章よりも型通りに感じられる かもしれません。しかしこの音楽は、つねに立ち止まり、再開しています。そのような流れがは らむ現代性は、曲が進むにつれ、ますます強まっていきます。彼は第5番とともに未来への扉 を開いているのです。全5曲のソナタをフーガで締めくくることを彼が選んだのも、偶然では ありません。彼は、当初チェロとピアノのためのソナタを書きはじめたとき、自分が二つの楽 器の声をフーガの中で絡ませることになるとは、全く想像していなかったはずです。 ダヴィッド・セリグ : 三つの楽章の性格は、それぞれ全く異なります。各楽章は、ベートーヴ ェンが第1番から探求してきた多様なアプローチを振り返り、統合しているかのようです。と いうのも、変化が突発する第1楽章は古典派の音楽ですし、感情表現が極めて濃密な第2 楽章〈アダージョ・コン・モルト・センティメント・ダフェット〉はロマン主義を志向しています。 終楽章のフーガは、彼が人生最後の10年間に取り組んだ対位法の探求を総括しています。
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