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54 ベートーヴェン | チェロとピアノのためのソナタ&変奏曲全集 休符は音楽に不可欠な要素であり、その重要性は19世紀中にますます増していきま す…… ゲイリー・ホフマン : 私の見るところでは、多くの演奏家たちが、沈黙に耐えられないがゆえ に休符を邪魔物のように扱っています。しかし、私が音楽の中でもっとも愛しているのは、お そらく休符です! ベートーヴェンの音楽では、リズムと拍が極めて重要な役割を演じてお り、それゆえに休符は不可欠な要素です。 第2番と第3番のあいだには8年の開きがあります。緩徐楽章を欠く第3番では、終楽章の 出だしの数小節〈アダージョ・カンタービレ〉が、まるで終楽章の前奏のように響きます。こ のような楽曲構造について、どうお考えですか? ゲイリー・ホフマン : どちらかと言うと第3番の場合、第1楽章全体が緩徐楽章を体現して いるように思います。第1楽章〈アレグロ・マ・ノン・タント〉は、この上なく歌心に富んでいて 叙情的ですから……。自筆譜に記されている“Inter lacrimas et luctum(涙と悲しみの只 中で)”は、この楽章の憧憬に満ち満ちた豊かな表情を説明しているのかもしれませんね。
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