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51 ゲイリー・ホフマン | ダヴィッド・セリグ ベートーヴェンの様式の進展は、当時のあらゆる楽器製作法が遂げた“革命的”進歩とも 密に結びついています。ベートーヴェンは、初期の自作を楽譜出版者たちに売り込むこと に熱心でした。それゆえに彼は、チェロ・ソナタがチェンバロかフォルテピアノでも演奏さ れうると明記しています…… ダヴィッド・セリグ : 当時、ピアノの演奏テクニックは著しく大きな変化を遂げましたが、同 じことがチェロの書法にも言えます。ベートーヴェンの《ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための 三重協奏曲》(1803)の中に、その印象的な例が見出されます。声楽の書法が鍵盤音楽に 取り入れられ、ピアノの高音域が切りひらかれ……音楽家たちは少しずつウィーン古典派 の世界から離れて、未知の世界へ向かっていきました。この現象は、今日では古典派からロ マン派への移行であると説明されています。しかし当時の人びとは、これを様式の一大変化 とはみなしていませんでした。むしろそれは、作曲を絶えざる実験的探求として捉える新し い流儀だったのです。明らかに、ベートーヴェンは20世紀の音楽的思考の礎を築きました。

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