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50 ベートーヴェン | チェロとピアノのためのソナタ&変奏曲全集 時代を遡りましょう。お二人が受けた教育を振り返りつつ、チェロ・ソナタへのアプローチ について、より具体的にお聞かせください。かつて教師から得た助言や偉大な演奏家の解 釈は、あなた方の演奏に影響を与えているのでしょうか? ダヴィッド・セリグ : 私はパリで学ぶ前に、ドイツ・ロシアのピアノ演奏の伝統を授けられま した。そして“修行”を締めくくるに当たって、フランスでアルド・チッコリーニに師事しました。 チッコリーニ先生ご自身は、アルトゥル・シュナーベルのもとでベートーヴェンの音楽世界へ のアプローチを深化させました。私にとってベートーヴェン演奏のベンチマークであり続け ているのは、シュナーベルはもとより、私が生演奏を聞いたことのあるピアニストたち——マ ウリツィオ・ポリーニ、ルドルフ・ゼルキン、マレイ・ペライア、ラドゥ・ルプーなど——、さらにイ ツァーク・パールマンや現代の偉大な指揮者たちです。 ゲイリー・ホフマン : 私は14歳まで、カール・フルー[1914-1999、アメリカのチェロ奏者] にチェロを師事しました。偉大な教育者であるフルー先生が、私の演奏テクニックの堅固な 基礎を築いてくださいました。私の記憶が正しければ、フルー先生のもとでベートーヴェン のソナタを学んだことは一度もありません。とはいえ私の家族はいわゆる音楽一家で、ベー トーヴェンのチェロ・ソナタはいつも傍にありました。のちにヤーノシュ・シュタルケルからも 影響を受けましたが、私のベートーヴェンの作品に対する考え方は、シュタルケル先生のそ れとは異なります。先生が私に授けてくださったのは、あらゆる音楽に応用されうる明快さ、 正確さ、配慮、素養です。ベートーヴェンのソナタにかんして私が真に影響を受けたと言える 人物は、パブロ・カザルスだけです。
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