LDV110

44 ドビュッシー / ミュライユ つまるところ、ミュライユとドビュッシーの音楽を組み合わせることは、音楽史上に巨大な 橋を築くことを意味するのですね…… むしろそれによって、両者の驚くべき親近性を示すことができます! ドビュッシーの《前奏 曲集》の終曲〈花火〉を、ミュライユの作品の前か後に演奏しても、聞き手は何ら抵抗なく受 けとめるでしょう。しかも、私が2017年に初演した《水の中の小石 - ドビュッシーに捧ぐ》 は、ドビュッシーの〈水の反映〉へのオマージュ作品です。(ところで、この曲のタイトルが“水 の表面の反映 Reflets sur l’eau”ではなく“水の中の反映 Reflets dans l’eau”である点 は極めて重要だと思います。)ドビュッシーの《前奏曲集》にかんして言えば、第1巻も第2巻 も傑作ですが、おそらく第2巻のほうが、よりいっそう先見的かつ革命的です――〈霧〉や〈 花火〉が本当に1910年代に作曲されたのかと、疑ってしまうほどに! 《前奏曲集》は多種多様な曲から構成されています。それでも、コンサートで全曲が順に 演奏されるさいには、曲集としての一貫性を発揮すると思われますか? 一見すると、そうは思えません。〈花火〉の前に〈交替する三度〉が演奏されても、音楽的に 自明な脈絡は感じられません。しかしながらコンサートのさいには、今弾き終えた前奏曲と 次に弾く前奏曲の関係性について、十分に考える必要があります。ドビュッシーは一連の 前奏曲を、秩序立てて並べています。作曲家たちは、いっさいを偶然に任せていません。《前 奏曲集》にかんして、これ以上に優れた曲順などあり得るでしょうか? いっぽう、各曲間の 沈黙の長さ、一呼吸置く時間の長さも、重要なポイントになると思います。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx