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穏やかな革命 ここ数年、コンサートに通う聴衆やレコード愛好家たちは、主にベートーヴェンの作品を 介して、あなたの演奏に親しんできました。多くの点で革命的な作曲家であったベートー ヴェンは、先例のない音楽世界への扉を開きました。本盤では、クロード・ドビュッシーと トリスタン・ミュライユの作品を組み合わせていらっしゃいますね。あなたを今回の録音 プロジェクトに導いたのも、斬新な音楽言語の出現に対するご関心でしょうか? フランソワ=フレデリック·ギィ — ベートーヴェン以後、あらゆる音楽書法が“再考”されて きました。それは私が専門とするピアノ音楽にも、交響曲にも、室内楽にも言えることです。 ドビュッシーの《前奏曲集》第2巻の第1曲〈霧〉――ハ長調の子どもじみた旋律が“ぼやけ て”いく音楽――は、当然ながら、現代音楽の萌芽の一つとみなされています。ドビュッシー をミュライユの書法と結びつけることは、音楽の発展を、流転する音楽史の必然の帰結と して捉えることを意味します。
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