LDV109

52 ビアンコーニの姓と、彼の内に隠された情熱は、イタリアに由来する。こ の情熱こそが、舞台上の彼を奮い立たせ、聴衆の心を揺さぶる。イタリ アは、彼にとって馴染みのある言語がもつ色彩と、彼の幼少期を浸した 地中海の熱気がもつ色彩とともに、彼に歌いかける。しかし、ビアンコー ニが生まれ育ったのはニースであり、彼を形作ったのはフランスである。 それゆえに、芸術家・人間としての彼の内では、冷静さと熱烈さ、慎みと 炎が溶け合っている——それらをまとう優雅さと明るさは、彼の佇(た たず)まいと眼差しから滲み出ていると同時に、彼がピアノの前に座ると き、聞き手によって享受されることになる。 若かりし頃のビアンコーニは、めざましい上達をみせ、ニース音楽院を卒業後すぐに、ピエー ル・コシュローのすすめで数々の国際コンクールに挑んだ。ビアンコーニの音楽家としての 歩みの岐路の一つは、マルグリット・ロンとロベール・カサドシュの高弟、シモーヌ・デルベー ル=フェヴリエ女史のクラスの門をくぐった日である。“歌いなさい!”“聞きなさい!”——今日 もなおビアンコーニは、あの洗練された、内なる炎によって奮起した熱心な師から浴びた指 示を思い起こすことができる。そして彼は、彼女の言葉を、今やパリのエコール・ノルマル音 楽院で彼に師事する生徒たちに伝えている。 ラヴェル / ピアノ独奏曲集

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