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アルバムの最後を飾るのは、おとぎ話の世界——クレマン・ルフェ ーヴルとの共演によるピアノ連弾曲《マ・メール・ロワ》ですね。 《子どもと魔法》の作曲者ラヴェルは、“成長した子ども”であり続 けたのでしょうか? 彼の最後の家——モンフォール=ラモリー の“ベルヴェデール”——の部屋に所狭しと並べられた沢山の置 物と玩具を見れば、そう考えるのが妥当かもしれません。 モーリス・ラヴェルのポートレートである本盤は、《マ・メール・ロ ワ》なしでは完成しなかったでしょう。私たちはこの曲集を通して、 彼がこよなく愛した幼少期に目を向けることができます。ラヴェル は、子どもの純真さ、素朴さ、好奇心と感受性に惹かれ、それをど こまでも詩的に、かつ愛情を込めて音楽に置き換えることができ ました。《マ・メール・ロワ》は、おとぎの世界を描いています。ラヴェ ルの音楽は少々の仰々しさを交えながら、その世界を讃えていま す——じっさい、深遠で清らかな終曲〈妖精の園〉は、曲集の輝か しい大団円を築き上げます。

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