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48 ラヴェル / ピアノ独奏曲集 《グロテスクなセレナード》、一連のメヌエット、《前奏曲》、《ボロディン風に》、《シャブリエ 風に》といった小品には、どのような魅力や価値があると思われますか? どれも珠玉の作品です! 《グロテスクなセレナード》と《亡き王女のためのパヴァーヌ》には 他者からの影響がみられますが、そこにはすでに“ラヴェルらしさ”もあります。《グロテスクな セレナード》は独特な気質を感じさせます。皮肉のこもったユーモアと感傷性が、この曲を愛 すべきものにしています。ごく短い《前奏曲》には、はるか昔の記憶のような、胸を打つ詩情が あります。ここでラヴェルは、作品の価値はその大きさに比例するわけではないことを私たち に示しています。《古風なメヌエット》は、その力強く耳ざわりな和声はもとより、やや甘いトリ オ(中間部)の優美さによっても私たちを魅了します。詩的な《メヌエット 嬰ハ短調》と時を 超越した《ハイドンの名によるメヌエット》にも、抗いがたい魅力があります。粋な《ボロディン 風に》と《シャブリエ風に》は、この上なく完璧な“様式の実習”です。これら晩年の逸品は、ラ ヴェルが敬愛していた2人の作曲家へのトリビュート作品であり、それらは、表面的でありな がら味わい深く、無邪気なまでに軽やかで優雅です。ここでラヴェルは、じつに優れた手腕を 発揮しつつ、楽しくパスティーシュ(模倣)にふけっています。《ボロディン風に》は最高にロシ ア的です。グノーの歌劇《ファウスト》のアリアのパラフレーズである《シャブリエ風に》は、入 れ子の箱のような曲です。なぜならラヴェルは、シャブリエがグノーを模倣したらどうなるだ ろうかと想像しながら、シャブリエの作風を模倣しています!

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