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47 フィリップ·ビアンコーニ 《高雅で感傷的なワルツ》、《鏡》、《夜のガスパール》……これらは、ラヴェルの複数の作風 を体現しているとお考えですか? 答えはイエスでもありノーでもあります。ラヴェルの創作には驚くべき一貫性があります。彼 は、初期にシャブリエから影響を受けたとはいえ、かなり早い時期に——ほぼ直(ただ)ち に——自身の作風を確立しました。ラヴェルに固有な筆致は最初から存在し、彼の全作品 にその刻印を残しています。とはいうものの、ピアノ演奏技法の点においても、様式や美学の 点においても、《夜のガスパール》の世界と、《クープランの墓》や《ソナチネ》の世界はかけ離 れています。作曲家たちの中には、一つの軌道を走っているような印象を与える人もいます。 彼らは、自身の音楽言語の発展を、さらに遠くへ押し進めたいとの衝動に駆り立てられたの でしょう。その好例がドビュッシーです。いっぽうラヴェルは、多様な目標を掲げており、それ らは時に、互いに大きく異なります。ラヴェルは、同じことを繰り返したり、深く掘り下げたり はしません。彼は、いわば自身の文法を維持しながら、別の何かへと移り、テーマや展望を変 え、時に見方さえ変えます。彼は《鏡》の景色の後に、文学的な霊感にもとづく《夜のガスパ ール》へと移り、さらに《クープランの墓》と一連のメヌエットにおいて、そのまなざしを古風な 形式と18世紀フランスに向けています。

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