LDV109
20世紀の幕開けに、ラヴェルは未だそこかしこ で生き長らえていたロマン主義に背を向けた。 フランス音楽にして近代音楽であったラヴェル の音楽は、感情のほとばしりを好まない。 だとすれば、ラヴェルの音楽は慎ましやかなの だろうか? つねに平静なのだろうか? ラヴェル自身のように粋な身なりのピアノ作品 は、彼の胸の内をいっさい明かしてはいないの だろうか? ラヴェルの音楽の魔法のような響きと、魅惑的 でまばゆい外観の向こう側で、フィリップ・ビ アンコーニは光と影のあいだを揺れ動き、情熱 と官能性と深遠さを明るみに出す……
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