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36 バレエ これらのバレエ作品には、当然ながら物語があります。操り人形たちが登場する《ペトル ーシュカ》の物語は、きわめて演劇的で画趣に富んでいます。《高雅で感傷的なワルツ》に も物語があるのでしょうか? もともとはシューベルトの《34の感傷的なワルツ》と《12の高貴なワルツ》に敬意を表して 書かれたピアノのためのワルツ集で、8つの独立した情景が並べられています。後にラヴェ ルは、バレリーナのナターシャ・トルハノフからの依頼で、8曲の管弦楽版をバレエ音楽とし て手がけました。彼自身がバレエの筋書きを考え、“アデライード、または花言葉”という、風 情のある魅力的で詩的なタイトルを付けています。高級娼婦アデライードと、彼女を手に入 れようと争う二人――ロレダンという名の男と、ある公爵――の物語です。それぞれのワル ツが、花とその象徴と関連づけられています。チューベローズ、キンポウゲ、ヒマワリ、アカシ ア、ヒナゲシ、赤いバラ、というふうに……。ラヴェルが原曲のピアノ独奏版を作曲中に、すで にオーケストラのあらゆる音色を想像していたことは、彼自身の書き込みからもうかがえま す。私は今回、後の管弦楽版と台本が物語り、喚起しているものものを頼りに、鍵盤上でバ レエの雰囲気を再現しようと努めました。私の演奏を聞きながら、舞踊を想像していただ けたら嬉しいです。
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