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63 グザヴィエ・フィリップス | セドリック・ティベルギアン 「いうまでもなく、音楽作品を、書かれている通りに擁護しなければなりません。しかし私 たち演奏家の何よりの使命は、作曲家が夢見た通りに作品を擁護することなのです」と、彼 は述べている。それこそが、彼が次代に伝えようとしている価値観である。時間をかけ経験 を通じて自己を築いてきた者として、グザヴィエは、教え子たちがより強くなることを望んで もいる。彼の室内楽のパートナーの一人であるピアニストのフランソワ=フレデリック·ギィ は、グザヴィエについて「彼は、言わば岩であり、類まれな個性をもつ素晴らしい人間であ り、高潔な芸術家です」と語っている。 トリオやクァルテットの一員として演奏することは、たとえそれが唯一の活動の場ではなく とも、長期にわたる献身を意味する。グザヴィエは、ギィの他、テディ·パパヴラミ、アンヌ·ガ スティネル、セドリック·ティベルギアンら多くの演奏家たちと深く通じ合い、願望を分かち 合いながら、新たな出会いの数々を通じて音楽を“生きる”道を選んできた。とりわけ兄ジャ ン=マルクとは、コダーイとラヴェルの作品をともに録音し、二人のルーツであるアルメニア の作曲家たち——ハチャトゥリアン、ババジャニアン、コミタス——の作品にも光を当てて いる。 グザヴィエの音楽的地平線は広大で、果てしない。知られざる作品や新奇な作品との触れ 合いは、ベートーヴェンやブラームスやオッフェンバックやフォーレの作品と同じくらいに、 音楽家グザヴィエの心を高ぶらせる——そこには近年、マリー·ジャエルとシャルロット·ソ ヒーの作品も加わった。またロストロポーヴィチにならって、グザヴィエも、プロコフィエフ、 ショスタコーヴィチ、デュティユー、ブリテンの協奏的作品を熱心に演奏している。グザヴィ エと彼の“相棒”マッテオ·ゴフリラー(1710年製)が、熱狂に湧くオーケストラの前に現れる と、興奮に満ちた冒険がはじまる。一期一会の素晴らしい危険を冒しているという感覚は、 演奏による感情の高揚や、音および音を通じた交流が生む至高の喜びと混ざり合う。筋 肉、呼吸、奮い立つ心、そして彼の弓から湧き出でる音楽とともに、もはやグザヴィエは探し 求めることはせず、見出すことになる……
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