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62 フォーレ | チェロとピアノのための作品(全曲) グザヴィエ・フィリップス 寛大のレガシー 音楽は、彼の水であり空気である。グザヴィエ·フィリップスの人生において、音楽で満た されぬ日は1日もない。そして彼が音楽を呼吸し、音楽について考え、音楽について語ら ぬ時間は1分たりともない。音楽は、幼少期から彼の血の中に流れ続けてきた——この 明白な事実をみとめた彼の両親は、もともとピアニストであったが、自分たちのキャリア を脇に置き、息子グザヴィエと彼の兄ジャン=マルク·フィリップス=ヴァルジャベディア ン——のちにヴァイオリニストになる——の音楽教育に全力を注いだ。 グザヴィエは早い時期から、モーリス·ジャンドロンの助手であったチェロ奏者ジャクリーヌ· ウークランのもとで、厳格かつ善意に満ちた教えを授けられた。その後パリ国立音楽院でフ ィリップ·ミュレールに師事したグザヴィエは、多数の国際コンクールへの入賞を果たした のちに、巨匠ムスティスラフ·ロストロポーヴィチの目にとまり、彼から寛大な導きを得るこ とになる。以来17年間、グザヴィエはロストロポーヴィチをメンターと仰ぎ、薫陶を受けた。 グザヴィエのモットーも、ロストロポーヴィチから受け継いだものだ——「謙虚に、エゴを 封印し、芸術家としての行為を通して他者に何かを与える」……。グザヴィエは、自身がロス トロポーヴィチにどれほど多くを負っているのかを知っている——貴重な教え、パリ管弦楽 団へのデビューの後に彼の指揮で実現したアメリカの名門オーケストラとの共演、音楽教 育への情熱、指導者としての義務感など、枚挙にいとまがない。 ロストロポーヴィチから大きな学びを得たグザヴィエは、教育活動を演奏活動と切り離し て考えることができない。「みずからの関心を他者に注ぎ、自己の外に目を向け、かつて自分 が受け取ったものを社会に還元しなければなりません」と、グザヴィエは言う。ローザンヌ 高等音楽院のシオン校で、彼の生徒たちは、音楽において不正をはたらくことはできないと 学んでいる。それは情熱と真実にかかわる問題だ。
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