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57 グザヴィエ・フィリップス | セドリック・ティベルギアン 難聴は、フォーレとベートーヴェンの苦悩の種でした。この病は、フォーレ自身や彼の創作 活動、そして晩年の作品群に、どのような影響を及ぼしたのでしょうか? セドリック・ティベルギアン : フォーレは、ひどく難聴に翻弄されました。幾つかの舟唄や夜 想曲といった晩年の作品、さらに二つのチェロ・ソナタの緩徐楽章には、暗くドラマティック な側面がみとめられます。じっさい、短調、とりわけニ短調が繰り返し用いられています。私 が思うに、難聴は、フォーレを取り巻く環境から彼を孤立させ、内なる世界に引きこもるよう 強いりました。それによって、彼の極めて独自な音楽言語は、20世紀初頭のさまざまな影響 や動向や進展とは距離を置いたのです。フォーレは長い生涯を通じて、周囲で何が起ころう と、自分自身の音楽的思想から決して逸(そ)れませんでした。 グザヴィエ・フィリップス : ドビュッシーやラヴェルら、同時代を生きた作曲家たちは、ジャ ズ、アメリカの動向、アラビア音楽やアンダルシア音楽など、さまざまなものに強く惹かれま した。しかしフォーレは、それらに見向きもしませんでした! 彼が、冷静かつ頑なに、ひたす ら我が道を歩んだことは、確かに難聴とも関係しているはずですが、それは唯一の理由では ありません。彼はもともと、そのような特性の持ち主だったのです。フォーレはドビュッシーの ような愛国主義者ではありませんでしたが、それでもフォーレの音楽は断固としてフランス 的で、ドイツ音楽の影響は微塵も見当たりません!
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