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55 グザヴィエ・フィリップス | セドリック・ティベルギアン 後期の作品群も、同じように私たちを魅了し魅惑するのでしょうか? グザヴィエ・フィリップス : それは、フォーレの全作品のトレードマークとして、彼の晩年 の作品群の中にも見出されます。ただし晩年の作品は、よりいっそう鋭利で、時に深遠です が……。作曲家たちの中には、初期の作品に背を向け、かつて自身が愛したものを灰にする 人もいますが、フォーレは全てを受け入れました。それこそが、私が彼の全作品を愛する主 な理由の一つです。 セドリック・ティベルギアン : 彼の音楽の魅力を、旋律との関係から考察する必要もありま す。旋律は、彼の生涯を貫く糸のような存在です。フォーレは、旋律の生み手として非凡な才 能に恵まれていました。彼は夥しい数の声楽曲を書いたいっぽうで、ピアノ、ヴァイオリン、チ ェロを例外とすれば、独奏楽器のための作品は僅かしか残していません。二つのチェロ・ソ ナタには、“歌える”フレーズが散見します。適当な歌詞を付ければ、立派な歌曲になってしま うのです。それはドビュッシーの《チェロ・ソナタ》では考えられないことです! 《夢のあと に》の旋律は、チェロで弾いても、歌っても、美しく流れていきます。
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